【TK診療室 12】第64回日本人類遺伝学会(長崎)に出席して

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第64回日本人類遺伝学会(長崎)に出席して

 

バンビの会会員の皆様、こんにちは近藤達郎です。今回は、今年11月7日~9日まで長崎ブリックホールを中心に開催された第64回日本人類遺伝学会について報告します。今回の患者ブース(毎年、家族会の展示をされます)ではバンビの会と1q部分重複症候群の家族会(ひとやすみの会;会長の幸篤志さんはバンビの会の会員でもあります)などが展示をされました。バンビの会の隣は日本ダウン症協会(JDS)でしたが、むしろバンビの会の方が良かったように手前味噌ですが思いました。患者ブースにご協力いただきました会員の方々にはご多忙のところご尽力いただき感謝申し上げます。その詳細につきましては別に報告があるものと思います。

さて、実際に学会ですが、遺伝子解析により様々な遺伝性疾患の同定、家族性腫瘍やがん治療にも関連する癌ゲノムパネル検査など、内容が非常に高度でした。その中で、別の意味で興味深かったもの2つをご紹介します。

1つは医療におけるAI(人工知能)導入のシンポジウムです。やはり、レントゲン写真、エコー検査、内視鏡検査などによる画像解析についてはかなり進んできているようです。おそらく人の目より確かなこともありそうですが、大きめに疑い部位などをAIで提示されそれを医師が再確認するという感じになるのかなと聞いていて思いました。そのセクションで、声質、スピードや表情でうつ病など精神的状況をAIで把握できそうとの発表がありました。これは事前に知っていて、「例えば、退行様症状。重度知的障害、場面緘黙(かんもく:場面によってしゃべれなくなる)など、発語が難しい状況について、非言語的にAIなどを使って精神状況などを把握することができる可能についてはどうか?」という質問をしました。結論は、現時点は難しいという結果でした。その後、座長の先生と少し話をしたのですが、AIによるディープ・ラーニング(深層学習)には情報の蓄積が必要で、そのためには、例えばこの表情は○○の精神状況(確定的な答え)をいうつながりを作っていく必要があるようです。このつながりが確定しているものがたくさんないと、そもそもAIによって補助的にも何か診断できるようになる(する)ことは難しいということの様です。当たり前といえば当たり前だなと思った次第です。キーパーソン(母親など)が表情と精神状況を結びつけることを多くの方で行っていくと、そのうちに何かしら示唆的なものが見えてくるのかも知れません。結局、俗にいう、発語がないような重度の状況での精神状況を計る方法は未だ全く手探りの状況としか言えません。このことについて、何かご意見があればご教授いただけますと幸いです。

もう1つは、私もひとやすみの会の幸さんも参加していただいたシンポジウム14「様々な遺伝性疾患患者家族支援を考える」というセクションです。演者は、4名で埼玉県立小児医療センター遺伝科の大橋博文先生、愛知県医療療育総合センターの水野誠司先生、博休みの会の幸篤志さんと私でした。大橋先生と水野先生のところは、様々な遺伝性疾患で同一疾患患者家族が集まっての集団外来を行っていますのでその話をしてもらいました。水野先生の話しで興味深かったのは、小児慢性特定疾患の相互交流支援事業の話しでした。小児慢性特定疾患で同一疾患の患者家族に集まっていただき、情報共有などの支援を国と各都道府県が行うものらしいです。長崎県ではどうなっているのか気になって、インターネットで見ましたところ、この話が全く載っていませんでした。一度、確認してみる必要性を感じています。佐賀県の方のホームページをみると相互交流支援事業という名前は出てきておりませんが、家族支援という項目はありました。少し情報を仕入れてみようと考えています。私と幸さんの内容のスライド原稿をつけますのでみていただけますと幸いです。最終日にもかかわらず多くの方にお出でいただきました。本セクションを企画しましたので、盛況だったので良かったと思った次第です。

講演スライドはこちら⇒2019 日本人類遺伝学会近藤

幸さんの講演スライドはこちら⇒【幸】191009_発表資料_圧縮(第64回日本人類遺伝学会in長崎)