【TK診療室 15】ダウン症候群における呼吸器感染症予防の重要性
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ダウン症候群における呼吸器感染症予防の重要性
皆さん、こんにちは。現在、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の爆発的な流行で非常にご心配されている方が多いと思います。
ダウン症候群のある方は、呼吸器感染症に弱いことが知られています。呼吸器直撃型の感染症の代表的疾患であるRSウィルス感染症についてパリビスマブ(シナジス)が24か月以下のダウン症児での感染予防に保険適応となりました(2013年8月)。パリビズマブはRSウイルス(RSV)のエンベロープ蛋白であるF蛋白のグループA, B株共通のエピトープに結合する単クローン抗体です(簡単に言うとRSウィルスに対しての抵抗力となります)。この関係で「ダウン症候群とRSウィルス感染症の病態を考える―各領域における現状と問題点―」の座談会を羽田空港内で行いました。内容は「Fatal & Naonatal Medicine vol.5 (2) 25-35, 2013. 」に記載されていますが、これは新型コロナウィルス感染症にも通じるものがありますので、私見も入れて説明します。
ダウン症候群では40-50%の患者で先天性心疾患の合併症がみられますが、そのほとんどは単純なもので複雑なものは少ないと言われています。しかし、肺の形成不全があるために高率に肺高血圧を起こします。ダウン症候群の肺形成不全は、正常に比べ、肺胞入口輪に低形成があり、そのために末梢気道の拡張など気腫状変化が起こるとされています(八巻重雄:臨床家のための肺血管病変肺生検診断. 東京、メディカルレビュー社, 2000)。つまり、ダウン症者では先天的に肺の状況が良くないことが少なくないと言えます。
その上に、ダウン症候群では免疫力(抵抗力)も強くなく、ウィルスや細菌に対する特異抗体(個々のウィルスら細菌に対しての抵抗力)の産生が低下しています。
少し、専門的かも知れませんが、下図をご参考にしてください。
さらに、成人ダウン症者の死因において肺炎は非常に頻度が高いことが最近知られています。
これらのことから、ダウン症児・者では呼吸器感染症については特に注意か必要と思われます。
新型コロナウィルス感染症の中で、一般の方でも急激に呼吸状態が悪くなる方がいることは知られています。ダウン症児・者で咳など呼吸器症状がある場合には、今の状況下では主治医によくご相談されるほうがよいと思います。
令和2年4月6日