【TK診療室 7】 現在行っている臨床研究確認後

※当該記事での現在とは2019年となります。

こちらTK診療室7

現在行っている臨床研究の説明

みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家では現在、ダウン症のある方が約400名(成人約200名、未成年約200名)お出でになっています。これに、バンビの会の方を含めるとかなりの方とのつながりがあります。ダウン症候群以外の方も数多く来院されていることもあり、その方々・ご家族にご協力をいただき。様々な検討を倫理審査委員会承認後させていただいています。その説明をみさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家のお知らせでさせていただきました( http://www.misakae.or.jp/news/index.php?targetid=5#D302 )。その内容と現状などこの場を借りてご説明させていただきます。いずれも、患者・ご家族にとって意義深いものと信じております。現在進行中のものもあります(1-5)。参加を強制するものではありませんが、関係する項目などございましたら是非ご協力ご支援をご一考いただけますと幸甚です。ご不明な点などございましたら、各支部長や事務局を介してご連絡いただけます様お願い申し上げます。

 

  1. ダウン症候群の認知機能チェックリストの日本語版作成

ダウン症候群を持つ方々が加齢や退行様症状などで認知機能が低下した際にそれを評価できる指標が厳密には日本にはありません。数年前にイギリスでダウン症候群に特化した認知機能のチェックリスト(CS-DS)ができています。これの日本語版を作成しているところです。これが実際に日本のダウン症者で利用可能なものかどうかを検討していきます。定期的に利用していくと本人の認知機能の状況を経時的に調べることが出来、健康管理に役立つと思っております。バンビの会の皆様、みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家に受診されている方々に今年初めに第1回目の調査票のお願いをしましたところ、多くの皆さまにご協力をいただきました。本当に有り難うございました。その方々に第2回目(最終になります)にお願いをする予定です。ご多忙の所誠に恐縮ですが引き続きご協力いただけますと幸いです。

 

  1. ダウン症候群の無呼吸に関する研究

長崎大学保健学科の黒田先生が中心にダウン症候群を持つ方々の無呼吸に対しての研究を今年初めより行っております。多くの会員の方にご協力いただき有り難うございます。現在進行中ですが、今後の健康管理の一助になることを期待しています。

 

  1. ダウン症候群の排尿障害に対しての塩酸ドネペジル療法検討

これまで約15年余り継続して行ってきた私どもの研究からダウン症のある方の半数以上の方に排尿障害があることが判明しています。誘導排尿などは重要と思いますが、それでもなかなか改善しない方には定期導尿や手術などが必要になることがあります。このような状況に内服で改善させることを目指すことを目的としています。現在、特に15歳以上のダウン症候群をお持ちの方で排尿障害(排尿回数が少ない(1日3回以下)、排尿に時間がかかる、どうも途中で排尿が途切れることがあるなど)がご心配な方は、保険診療で腹部エコー(残尿の有無、水腎症の有無)などをみさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家で行っております。その上で、医療的ケアが必要と思われれば、長崎大学病院泌尿器科か佐賀大学病院泌尿器科のいずれかに紹介しています。この研究は引き継づいて行っております。是非、排尿について心配なダウン症をお持ちの方がおられましたら近藤の方までご相談下さい。宜しくお願い申し上げます。

 

  1. 口腔内の活性酸素解析研究と活性酸素を減らす方法の検討

ダウン症候群のある方は虫歯は少ないものの歯周病は非常に多いと言われており、この原因の1つに活性酸素が関係するかも知れないとの話しもあります。神奈川歯科大学(小松先生、李先生)との共同でダウン症のある方々の口内衛生状況の改善及び老化防止を目指して検討を始めています。先ず第1弾として、昨年(2018年)11月3日、4日の2日間で唾液の検査(唾液で活性酸素測定)や口腔内の観察を長崎と諫早で1日ずつ行いました。現在、神奈川歯科大学を中心に解析中で今年8月4日(日)13時より長崎大学病院内で報告予定です。今後、「ペコぱんだ」などの口腔ケアなどを実践していただき、再度活性酸素を減らすことが可能かなど検討していただけるようです。次回は11月2日(土)ハートセンター、3日(日)さをり工房長崎で行っていただける予定です。昨年、ご都合で参加できなかった方もご興味があればご参加下さい(無料です)。

 

  1. ダウン症候群のあるお子様における精神発達症群(自閉スペクトラム症候群を含む)の関係性の検討

今年9月29日(日)13時より長崎大学医学部記念講堂で開催される第13回目ダウン症候群トータル医療ケア・フォーラムに併せて、みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家の森先生(当日ご発表されます)が中心に、当センターに来院されているダウン症候群を持つ小・中学生に対して調査を開始しています。これにつきましても何か分かり、解決法などに繋がることを期待しています。

 

  1. 外表的特徴からの診断ツールの開発の検討

人工知能(AI)を用いての外表的特徴から診断に結びつけるツール(Face2Geneシステム)の日本版を作成することを検討しています。本研究の協力にご了承いただいたみさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家受診の患者様、バンビの会の皆様には小さい時の写真を含めましてご協力いただき有り難うございました。撮らせていただいた写真などは事前にご説明したとおり、解析し次第、完全に消去して確実にプライバシーを保っておりますのでご安心ください。皆様のおかげで、この研究は間違いなく今後の遺伝医療に一石を投じるものになり、今後我が国全体で進めるきっかけになったと確信しております。本研究は長崎大学原研遺伝三嶋博之先生を中心に検討していただきました。今回、先天性外表異常症候群47疾患の74名及びダウン症候群を持つ方34名の方にご協力ご支援いただきました。Face2Geneシステムと言う顔貌認識AIシステムを使用することで、先天性外表異常症候群の方の8割余りの方について正面からの写真のみで候補疾患トップ10に該当疾患が入っていました。ダウン症候群に関しては特に小さいお子様ではほぼ全員が完全に診断ができていました。これまでは顔貌の特徴など専門的な医師しか外表的特徴から診断に結びつけることができませんでしたが、その候補疾患名を手にいれることがある程度できることから臨床診断の一助になり、その後の対応などに役立つのではと期待しております。今後、このシステムを様々な角度で検討を重ねるとともに、どのように臨床に利用するべきか検討をしていく予定です。皆様にご協力していただいたものについては一応の終了をすることができました。重ねてお礼申し上げます。

 

  1. ヤコブセン症候群(11q- 症候群)の全国調査

本疾患は非常に稀な疾患でその数、状況において不明なことが多々あります。私どものは以前1q部分重複症候群の全国調査を日本小児遺伝学会会員の先生方のご協力のもと行い、我が国で患者数が約30名前後であることが判明し、その健康ガイドラインを作成しました。同様の手法を用いて、ヤコブセン症候群の全国調査を長崎大学小児科の先生が中心に行っています。本研究も継続中です。

 

  1. ダウン症候群の白血球数と老化・感染症との関連性の検討

ダウン症候群のある方の白血球(リンパ球)が少ない群があることはこれまでの経験から感じています。ダウン症候群は早老症の1つとされていますし、年齢が高くなると重症の感染症に罹患しやすい傾向もあります。また、誰でも加齢と伴に白血球(リンパ球)が減少することも知られています。ダウン症者の白血球数(リンパ球数)が本当に少ないのか、それと老化徴候や易感染と関係があるのかを熊本大学、長崎大学原研遺伝と共同で検討しています。本研究の意義は、もし白血球(リンパ球)数と老化・感染症との関係があれば、通常の採血をすることで今後感染症により用心する必要があるかどうかが推定しやすくなり健康管理に役立つものと期待しています。本研究は、現在集まったデータを解析中です。近い将来、お話しができるものと思います。ご協力ご支援有り難うございました。

 

  1. ダウン症候群などの人生ノート作成

皆様のご協力ご支援のおかげで、ダウン症候群のある方及び先天異常を含むハンディをもたれた方用の「あしあと(人生ノート)」の第1版が出来上がりました。年金申請などの福祉手続きや親元から離れることになった際に困らないようにとの思いで作成したものですが、いろいろな利用価値があるものと期待しています。永井真理子様をはじめ多くのおかげと重ねてお礼を申し上げます。