【TK診療室 16】現在の「みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家・総合発達外来」を行っていて感じること
TK診療室16
現在の「みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家・総合発達外来」を行っていて感じること
これまで会員ホームページに出していた分を昨年12月で全て皆様に見ていただくことが出来ました。ここからは、アップデートでこれを続けていきたいと思っています。今回、お伝えしたいのは2点あります。
(1)ダウン症候群をお持ちの方の新型コロナウィルス感染症の現状
TK診療室15でお話ししましたが、新型コロナウィルス感染症が現在も猛威を振るっています。更にインフルエンザ感染も同時流行しています。以前、コロナウィルスにダウン症者、特に年長者が罹患すると、命にかかわることもあり得るという報告もあり、多くの方がワクチン接種をされていると思います。それでも、多くのダウン症児・者が新型コロナウィルス感染症に罹患したということが耳に入るようになりました。これまで、私が知っているダウン症候群をお持ちの方で新型コロナウィルスに罹患したのは20-30名以上になっています。幸いなことに、命にかかわり病院に入院された方は今のところおられません。ワクチンが効果的であるのか、人種・体質的に国外の方と比べて新型コロナウィルス感染症に対し軽症ですむのか、その両方かなどはよく分かりませんし、数がまだ多くないバイアスがかかっているのかもよく分かりません。悪くない話ではありますが、今後も、注意深い観察が必要と思っています。
(2)深刻度が高い方・ご家族へお伝えししたいこと
新型コロナウィルス感染症の影響で、行動制限などが強くなるなど、生活環境の変化が関係するのか、精神的な不安定性が強くなっている方が散見されています。精神的不安定の種類は、大きく分けて拒否性・衝動性が強く自傷・他害が強くなる場合と、外出などが全くできなくなってしまう場合がありそうです。いずれの場合にも、病院などに受診することそのものが難しく受診したとしても診療を拒否されてしまうなど医療を受けにくくなるばかりか、福祉サービスなどを含めて、社会との接点を得ることさえかなり難しくなる場合もあります。特に近年、健康管理のためのガイドラインがいくつか出されていますが、全く縁遠く感じ入られる方もおられると思います。場合によっては相談支援担当者との接点もほぼなくなっている方もおられます。自宅で、本人が好きなようにさせておけば、大きな問題がない方もおられるかも知れません(それでも、食事準備や清潔管理は家族がされている場合がほとんどです)。そのような場合にでも、もし家族(特に母親)に何かあった場合には、その生活は一気に破綻することが危惧されます。何とか、行政や福祉関係者、医療関係者などに「困っている・どうしたらよいか」と声を上げることが大切と思います。声を上げても、通り一遍の答えしか返ってこないこともあるかも知れません。それでも、現状を打破すべく何とか行動を起こす必要があるのではと思います。そのためには、ご家族の心身の安定が不可欠です。周りには心優しい方も多くおられると信じます。何とかトンネルから抜けれることを心より祈っております。
令和5年1月18日
添付ファイル:TK診療室16