【TK診療室 2】心の折り合いが日常生活行動に直接関係する?

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心の折り合いが日常生活行動に直接関係する?

 

みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家の私の外来に多くの日常生活行動に支障を来したダウン症候群を中心とした方々がお出でになります。家族のご心配はそれこそ深刻です。その中で、心の折り合い(心の健康状況)の問題がどうも関係しそうな方々が少なくないように最近思うようになりました。

例えば、何か心配なことやストレスがかかるようなことがあったとします。私どもの場合は、眠れなかったり、食欲がなくなったり、その影響で何か元気がなくなってしまったりします。これは誰にでもあるもので心因反応と思います。これがもう少し進むと、何か気分が晴れない、やる気が出ないなどのうつ的状況になり、もう少しそれが強く日常生活を送りづらくなるとうつ病となるのかも知れません。ただ、コミュニケーションは普通に取れますし、日常生活能力そのものが阻害されることは少ないと思います。

ところが、ダウン症候群などのハンディを負われた方々は、多分、心因反応が少し強い程度でも日常生活能力は破たんしているのではと思えることを経験しています。この方々は、表向きは、言葉もほぼ出なくなる、行動も遅くなる、拒否感も強くなる、昼夜逆転してしまう、表情に陰りがあるなど急激退行の診断基準を満たします。このまま経過をみていくことは家族にとっても全く不安・心配を解消することには結びつかないため、内向きの状況が強い場合、他害自傷など表向きの症状が強い場合、何か不安・恐怖が強い場合、行動のみが遅くなる場合などその状況に見合ったお薬を処方しています。その薬が非常に効果的なこともありますが、副反応と思えるものが強くお薬が合わない場合や全く効果が見られない場合もあります。一般的におそらくいえることは、これらお薬をダウン症者に使用する場合には通常量では効果が強すぎるため、少な目から始めた方が良いということかなと個人的感想を持っています。その中で、お薬で効果が今一かなと思える方で変更をしていないのに、ある時、急に改善する方がいるということです。ご家族にその契機となる出来事の存在をお聞きしても全く思い当たることがないと言われる場合が実は多いです。多分、本人の心の折り合いがついたのではとしか思えません。お薬である程度効果を認めている方の中にも、お薬を飲むという行為をすることで心の折り合いがついて改善している方もいるのではと思えてしまいます。お薬が明らかにキーになっている方もいるのですが、症状的に残念ながら判別がつかないように感じています。

つまり、本人にとって心の健康状況を乱すことがおこり、日常生活能力の大幅な減退まで行ってしまい、それが何か本人の中で心の折り合いがつけば改善する(元の元気な状況に戻る)方がいるようです。しかし、その方がそのうちに心の折り合いがつくものかどうかも分かりませんし、どれくらい時間がかかるのかも不明です。一生そのままかも知れません。

色々な検査はありますが、ほとんどが表向きの検査であり、全くやる気がない(表出する気がない)状況と本当にできない状況の区別がつかないのが現状と思います。話せない(話さない)方の精神状況を何か見極めることができ、心の折り合いをつける手助けを何かできる方法があると良いなあと思います。これは、非常に重要なことであるように感じるこの頃です。

家族の健康状況は重要である

当センターにお出でになる30-40台の方も少なくありません。遠方からお出でになることも多く、交通の便の悪さから自家用車を利用される方がほとんどと思います。親は60台後半以降の方も少なくなく、ガンなどの生活習慣病に罹患したり整形外科的な問題がある場合も多いです。当然ですが、家庭内で心配な健康状況の方がおられるとそれが家族みんなに伝播します。また、当センターにもお出でになることが難しくなられる方も実際に出てきています。親は我が子の幸せを願うものですが、そのためには親自身の心身の健康管理は子どもの健康と同じくらい重要と感じています。皆様、我が子のためにも、どうぞご自愛ください。

2019年5月12日