「パタカラプラス」についてのご紹介

「パタカラプラス」についてのご紹介

2020.6.21

近藤達郎

 

今回は、現在進めている「パタカラプラス」についてご説明をします。個人的には非常に意義深いものであると思っております。概略とこれまでの経緯などに触れさせていただきます。少し、長くなりますが、ご一読いただき、「パタカラプラス」をご活用していただけますと幸いです。

 

「パタカラプラス」YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UCFKI_HkeQPz27g7uIP5BGeQ

 

はじめに

皆様、「パタカラ体操」という言葉はご存知でしょうか?インターネットで検索すると非常に多くヒットします。

口腔機能訓練の1つであるパタカラ体操の効果は、小児では (1) 発音がハッキリする、(2) 噛む力、飲み込む力が鍛えられる、(3)口呼吸が鼻呼吸になり、口中の乾燥を防ぐ、老齢者では (1) 咀嚼(噛む)、嚥下(飲み込む)機能が維持、向上する、(2) 唾液の分泌が促進される(ドライマウスの防止)、(3) いびきや歯ぎしりが改善される、(4) 発音がはっきりし、口が動きやすくなる、(5) 入れ歯が安定する、(6) 口呼吸から鼻呼吸になり、口臭が改善される、(7) 小顔効果や顔のたるみなどのアンチエイジングに良い、などと様々なことが言われています。

口腔ケアを中心に様々な歯科関係のガイドラインなどに出てくるなど一般に周知されているものの、その出展や医学的な根拠についての論文はいくつかあるのみで多くないようです。これは、日常生活上、パタカラ体操以外でもいろいろな行動などが入り込むため、その評価を独立的に客観的に確認することが難しいということがあるのかも知れません。

私どものセンター(みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家: https://misakae.or.jp/facility/mutsumi/ )には数多くの遺伝性疾患をお持ちの方がお出でになっています。ダウン症候群のある方については約400名(0歳-60歳代:未成年者約200名、成人約200名)の方の診療、療育にあたっており、知的障害も関係してか発語や嚥下の問題などで苦慮していることが少なくないことを経験しています。更に、日常生活上の動きについても筋力低下や不器用さなどからスムーズでない方が多い印象があります。そのため、口腔内機能改善のパタカラ体操に、日常生活能力向上を目指した全身体操を加えた「パタカラプラス」を作成し、これが本当にダウン症候群を中心にしたハンディを負った方々の能力向上につながるものかを評価することを目的に検討を開始しました。

 

「パタカラプラス」と言う名前

本企画は「パタカラ体操」から始まっています。パタカラ体操は口腔機能訓練ですが、折角なのでパタカラ体操に、何らかの運動機能改善を目指しての体操(ダンス)を加え、今の時代のIT機能を駆使して自動評価できるようなトータルシステムの確立を考えています。当初は、「パタカラ・トレーニング・ミュージック」などいろいろと候補に名がったのですが、最終的に「パタカラ」にいろいろな付加価値をつけるということで「パタカラプラス」に落ち着きました。

 

「パタカラプラス」の最終目標

多くのハンディを負われている方々は、療育センターやリハビリテーションセンターでリハビリテーションをされていると思います。小さいお子様のリハビリテーションは、独立歩行(少しでも早く歩けるように)、発語(少しでも早くコミュニケーションがとれるように)、日常生活上の様々な動作(食事を箸やスプーンなどを使って食べたり、ファスナー開閉やボタンかけが上手にできるようになど)や社会性を育てるなど発達を促すことを目的としています。しかし、そのニーズの高さから、リハビリテーションをご希望通りに受けることができる方は多くないのではと危惧します。

「パタカラプラス」の最終目標は、自宅でYouTubeなどを利用して、楽しみながら歌って踊ることで、日常生活上の様々な機能を高める一助になることにおいています。開始し始め、3か月後など定期的に動画(歌って踊る姿をスマートフォンなどで録画)をとるとその進歩がみえるのではないかと期待しますし、これを、人工知能(AI)で自動採点するシステムが同時にできれば、本人・家族のモチベーションの維持・亢進につながるのではと思っています。現時点は、その評価に関しては適したものがないため、その開発にも同時に動いています。評価法の開発にはかなり時間を要すると思いますが、確立しましたら、またご報告いたします。

曲についても、振り付けにつきましても、この目的に適したものをいう制限のもと、頑張っていただいています。

 

「パタカラプラス」を支える主要メンバー

 

ミュージック・ビデオ作成グループ(2020年6月21日現在)

作詞・作曲:        松本公義

振り付け:     山口邦子

編曲・演奏・歌     Rainbow Music  https://www.rainbowmusic-mobile.net/

映像作成              NANAIRO PRODUCTION

助言                    みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家 リハビリテーション科      https://misakae.or.jp/facility/mutsumi/

評価グループ(2020年6月21日現在)

北原鉄朗              日本大学文理学部情報システム解析学科音メディア情報処理研究室(北原鉄朗研究室)  http://www.kthrlab.jp/

尾上 洋介   日本大学文理学部情報学科(尾上研究室)https://vdslab.jp/

李 昌一            神奈川歯科大学横須賀・湘南地域災害医療歯科学研究センター http://www.graduate.kdu.ac.jp/saigai/

小松知子              神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科 http://www.kdu.ac.jp/corporation/info/studentcount/kaiso/

三嶋博之              原爆後障害医療研究所 ゲノム機能解析部門 人類遺伝学研究分野 https://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/dhge/

森藤香奈子           長崎大学医学部保健学科看護学専攻 http://www.am.nagasaki-u.ac.jp/nursing/index.html

松本 正              みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家 リハビリテーション科

 

企画・立案・調整など(2020年6月21日現在)

近藤達郎、バンビの会(染色体障害児・者を支える会)   https://banbinokai.com/

 

これまでの経緯

 

2017 年 12 月 6 日:ダウン症候群の研究会などで存じ上げていた神奈川歯科大学 李昌一先生、小松知子先生にダウン症候群の口腔ケアのことでご相談したことから始まる。

その後、定期的に長崎内でダウン症候群のある方の口腔内ケアと唾液活性酸素の調査を行って いただいている。その時に、ダウン症者への「パタカラ体操」は多分意義深いのだけど、歌やダンスが&好きなのでそれを利用したものが何かできると良いのではとのご提案をいただいて いた。その間、舌運動訓練である「ペコパンダ」も利用していただき、この訓練でダウン症児 ・者の舌圧の向上に「ペコパンダ」の効果が確認された。

2020 年 1 月 14 日:長崎県の中学校音楽教師でブラスバンドの顧問もしていると同時に、作曲も手掛けられている松本公義先生が、「パタカラ」音楽を作成することをご快諾いただいた。

せっかく作るのだったら、楽しく、しかもトレーニングになるものが良いと思い、当センター リハビリテーションに相談。言語聴覚士(ST)の先生方には何か参考になる言葉を、作業療法士(OT)にはダンスで日常性格能力改善につながりそうな動作を検討していただいた。

この時に、ダンスについてはバンビの会バンビーズにお願いし、振付はバンビーズをご指導いただいている山口邦子先生にお願いしたいと思っていた。

みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家に来院されるダウン症者・ご家族にこの企画の話をすると、非常に多くの方に賛同と早く利用したい旨の話を伺った。当センターでST,   OTの方々の支援をいただくことから当施設長(福田雅文先生)にも協力を依頼し、承諾をいただいている。

1 月 18 日:バンビの会役員会の時に、バンビーズの練習も行っており、山口先生も来られていることを確認。役員会に山口先生に同席していただき、バンビの会役員に趣旨説明を行い、本企画 を承認していただき、山口先生には振付の同意をいただく。その際に、長崎県高島に移住し、音楽活動を展開しているRainbow Music に歌をお願いするのが良いのではないかとの意見が あった。そこで打診を進めることで承認された。

1 月 27 日:Rainbow Musicの方々に内諾いただいた。その旨を、作詞・作曲していただく松本先生に状況を説明した。

2 月 2 日:長崎ハートセンターで 山口先生、Rainbow Musicの方とバンビの会 川口さん、冨永さんと面談。趣旨説明後、Rainbow Musicの皆様に歌を歌っていただくことにご快諾をいただ いた。その旨を、作詞・作曲していただく松本先生に状況を説明した。

その後、経緯を神奈川歯科大学 李先生、小松先生にご連絡。その時に、評価が必要との意見も出た。折角の試みなのでなるべくきちっとした評価が必要であるが、自宅で行い、ダウン症児・家族に負担が少ない スマートフォンなどでの動画撮影のみで評価が可能というものが良いのでは考え始め、この件で、コンピュータに詳しい長崎大学医学部原研遺伝 三嶋博之先 生と相談を開始した。

2 月 14 日:長崎大学医学部原研遺伝内で三嶋先生と話し合い。この分野に詳しい日本大学文理学部 情報科学科 北原鉄朗先生にご相談するのが良いのではとの結論になった。

2 月 15 日:バンビの会役員会でこれまでの推移を説明するとともに、この企画が医学的にも本当に 効果があるのかを検討する必要があるとの話を行った。

2 月 18 日:松本公義先生より、作詞(案)が出来上がったとの報告あり。関係する方(みさかえの 園むつみの家言語聴覚士)で再度検討を行った。

2 月 21 日:北原鉄朗先生に加わっていただくことについてのご相談のメールをお送りした。

2 月 25 日:様々な検討をもとに最終的な作詞であるパンダのたからものを松本公義先生に作成 いただいた。

2 月 28 日:北原鉄朗先生より、ご協力いただける旨のお話をいただいた。

2 月 29 日:松本公義先生より作曲ができたとのご連絡をいただいた。

3 月 14 日:ミュージック・ビデオ作成グループ(松本公義先生、山口邦子先生、Rainbow Music、バンビの会より、川口靖子様、冨永眞理子様、テレビ長崎(KTN)の方々で14時より長崎ハ ートセンター内で第1回目の会合を行った。

3 月 19 日:松本公義先生より、第2弾「かたたたきのうた」の作詞ができた旨のご連絡をいただ        く。

4 月 11 日:Rainbow Musicの尽力で、「パンダのたからもの」伴奏及び歌が完成した。

4 月 26 日:山口先生の尽力で準備体操、座ってできるバージョン、立って行うゆっくり目バージ ョン、立って行う速いバージョンの3つの振り付けが出来上がった。

4 月 27 日:第2弾 「かたたたきのうた」の曲とRainbow Musicの試作が完成。

4 月 28 日:みさかえの園総合発達医療福祉センターむつみの家での倫理審査委員会で本検討が承認 された。長崎大学保健学科 森藤香奈子先生にも入っていただくことになった。

5 月 1 日:評価について、日本大学 北原先生、神奈川歯科大学 李先生、小松先生、長崎大学原 研遺伝 三嶋先生とテレビ会議を行う。

5月10日:「パタカラプラス」チャンネルがYouTubeにアップされ た。「パンダのたからもの」の歌掲載。

6 月 5 日:18時より第2回日本大学 北原先生、神奈川歯科大学 李先生、小松先生、長崎大学原研遺伝 三嶋先生とテレビ会議を開催。

6 月 7 日:高島(長崎県)で、松本先生、山口先生、Rainbow Music,バンビの会でミュージック・ビデオ作成と今後の方向性について話し合いを持つ。この時に松本先生より、第3曲目「TAP de DANCE」の披露があった。

6月19日:「パタカラプラス」チャンネルに「パンダのたからもの」動画4種       類(バージョン1-4)が同時にアップされた。

6 月 20 日:バンビの会役員会で現状を報告。

現在に至る(2020 年 6 月 21 日)

 

今後の抱負

今回、「パタカラプラス」の立ち上げの経緯を中心に報告しました。是非ご活用いただき、今後の人生に何らかのプラスになることを願っております。私どもは経済的な基盤がある訳でないため、皆様のご寄付も受け付けております。また、療育施設、学校などでご利用しやすくするために、インストラクションなど色々と含めたDVDも将来販売することも計画しています。この企画が継続できますように皆様のご理解ご支援を宜しくお願い申し上げます。

 

問い合わせ、連絡先:バンビの会(染色体障害児・者を支える会)
メール:  patakaraplus@banbinokai.com